繰り返し発生する地震に対し模擬地震動・時刻歴地震応答解析

エネルギー法サポート会員

b B_ENG エネルギー法

第1話「なぜエネルギー法なのか」
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 既にご存知のように、2000年6月の改正建築基準法の施工以来、性能規定化に対応した性能評価法として、いわゆる限界耐力法が制定。施行されました。引き続き「エネルギーの釣り合いに基づく耐震設計等の構造計算を定める件」告示案(以下エネルギー法と呼ぶことにします。)が、2003年6月30日
に提案されました。いずれの方法も、建築物の耐震設計の幅をひろげ、ごうりてきな設計を実現しうるものであり、今後の新しい性能評価法・設計法として広く利用されると考えられます。限界耐力法は、地震動による建築物の限界変形との比較に基づく検証方法であります。一方エネルギー法は、地震入力エネルギーと建築物が吸収しうるエネルギーとの比較に基づいた検証方法であります。同じ建築物の耐震性能を評価するためのものでありながら、両者は基本的な考え方において大きく異なっています。
 限界耐力計算法は等価線形化法に基づく手法であることはよく知られています。限界耐力計算法は等価線形化法を採用していることから、線形に近い系あるいは塑性化しても弾性挙動する構造要素が確実に存在する系に対して適用できることになります。すなわち、弾塑性要素が存在すれば、損傷分布が弾性系の損傷分布ないしは理想的な一様分布に近づいていきます。つまり、等価線形化法では、損傷分布は予め線形系と同等であると仮定している訳です。この意味で、等価線形化法には、適用範囲があり、性能評価の精度について注意する必要があります。

h1)地震入力のレベルを設定する。
h2)損傷分布を把握する。
h3)損傷分布と各部の構造部材の応答諸量とを対応づける。

に分類できます。この耐震設計の流れにそって、エネルギー法をみると、エネルギー法の技術的な立脚点は、以下の3点となります。

h1)地震は非常に複雑な過程をたどる現象であるが、構造物に投入される地震エネルギーの総量
hは、総質量、1次固有周期のみ依存する、”非常に安定した”量である。
h2)構造物各部の損傷分布は、構造物の耐力分布、変形特性、層せん断剛性に依存する。
h3)構造物各部の損傷は、降伏強度と累積塑性変形との積(エネルギー量)で表現でき、各部の最大応答は、変形特性に応じて、累積塑性変形と対応する。

 現在、電子計算機の発展により、構造物の非線形挙動は、有限挙動法や時刻歴地震応答解析技術により、多様な構造物についてかなりの精度での解析が可能となっています。しかしながら、構造物にのモデル化や数値解析結果が正しいものであり、得られた膨大な応答値が、基準法における目標性能を充足しているか否かの判断を行うことは、一般に困難であるといえます。このような状況下で、エネルギー法の技術的立脚点を「ものさし」として採用すれば、数値解析結果を判読し、総合的に性能を認識して、耐震性能を判定する助けとなるはずです。では、エネルギー法の基本的な考え方を以下に示します。

h1)地震入力を総入力エネルギーで捉え、構造物の損傷という概念を、履歴吸収エネルギーとい
hう尺度で表す。これにより、地震入力エネルギーの上限値が、容易に設定できる。
h2)各層の損傷の集中を評価しうる算定式が誘導でき、また、この算定式を工夫することで、
h剛性に偏心が生じた場合も取り扱うことができる。
h3)エネルギー吸収機構を有した構造物の性能を容易に判定できる。
h(鋼製ダンパー等の制振部材を使用した設計が可能)

という利点がでてきます。以上の背景を踏まえて、エネルギー法についてみていくこととしましょう。
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第2話「なぜエネルギー法 概要」
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 エネルギー法をできるだけ平易に、話を進めたいとおもいます。
エネルギー法とはどのようなものか、また通常、取り扱っている静的解析の1次設計や2次設計は、どのような位置付けとしてとらえられるか等、考えてみたいと思います。

エネルギー法
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 エネルギー法といっても今までの振動解析・限界耐力法と大きく変わるわけではありません。このような新技術を理解するときには、細部にとらわれるのではなく全体の枠組みと目的を理解することが重要であるといえます。そこで、エネルギー法を理解するためにもう一度振動理論から振り返ってみることにしたいと思います。

b エネルギー法の基礎も振動から・・・
1.質点系の振動方程式は、以下のように書けるのでした。
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エネルギー法の釣り合いに基づく耐震設計等の構造計算
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 地震終了時以降では、構造物の塑性化はほとんど生じません。地震が終われば構造物に大きな力は働かず自由振動しているということは、地震終了後構造物は、普通弾性振動したいることになります。
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これは、地震入力エネルギーは弾性ひずみエネルギーを除いて、ほとんどが弾性ひずみエネルギーとして吸収されると考えることができると結論できるのです。
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第3話「構造物の損傷」
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 エネルギー法も振動解析技術のひとつの応用になります。
建物が壊れてる(損傷)程度を表す指標として塑性率・累積塑性変形率・履歴吸収エネルギー量等があります。
塑性率とは、許容応力度等(保有耐力設計法)で使用しているμの値で建物の塑性変形能力を表す数値です。そして、履歴吸収エネルギー量は、限界耐力法で等価減衰を算定する根拠になっていた値です。新しくできた、累積塑性変形率これこそが、エネルギー法で損傷の尺度として使用している新しい概念です。
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たしかに限界耐力法ではエネルギー吸収量の大きさを等価な減衰で評価していました。エネルギー法ではエネルギー吸収量と建物の吸収すべきエネルギー量の比較であるために直接算定することができます。さらに、エネルギー吸収量といっても、建物が吸収するエネルギーは、大地震時においてはそのうちの大部分が履歴吸収エネルギーであると考えることができます。そこで
エネルギー法では簡単化のために累積塑性変形率という考え方を採用しています。
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この、累積塑性変形率を無次元化したものが、先の式のηで累積塑性変形率といいます。この、累積塑性変形率を利用すれば、耐力・弾性限界変位の大小に関わらず、構造物の損傷を評価できます。今までの手法と大きく変わっているのは、塑性化した時における変形の総和(累積値)で評価していることです。

今までの手法では、
h地震が継続している間の瞬間的な最大応答値
h建物に作用する力や、変位の瞬間的な最大値について検証
ところが、エネルギー法では
h地震動が作用し始めて終了するまでの累積エネルギー吸収量
で評価しています。
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第4話「構造物の塑性変形性能」
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 エネルギー法においての検証尺度については理解できましたでしょうか。
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第5話「損傷の配分」
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b 損傷の配分について、考えてみると・・・
 建物に作用する地震入力をエネルギーとしてとらえるとせん断型骨組みの各層の損傷の配分の定量化が可能となります。せん断型骨組みは各層の層せん断力がその層の層間変位にのみ依存する系で、柱降伏型のラーメン構造・軸組み筋違構造等がこれに含まれ既存の多くの建物がこれに属します。
 せん断型骨組みの特徴は、各層の損傷分布に極めて敏感で、相対的に弱い層に損傷集中が起こり易いことです。これに対して柱は弾性に留まり、梁のみが塑性化するいわゆる梁降状型のラーメン骨組みでは、梁が全層にわたって塑性化し、特定層への損傷集中は起こりにくく、骨組みの塑性エネルギー吸収能力が有効発揮され、梁降状型は耐震に優れた構造であるとされてきました。しかし、梁降状型の骨組みを実現することは容易ではありません。理想的な骨組とは、耐震性能について言えることですが、AI分布に沿った剛性配分をもつ構造物です。
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確かにAI分布は、地震時の外力分布ではあります。しかし、見方を変えると、AI分布に沿った剛性配分をもつ構造物であるならば、地震時に構造物全体が等しく変形する構造体であると言えます。すなわち、特定の層だけで抵抗せず、建物全体で地震に対して抵抗する構造体であると言えるのではないでしょうか。保有耐力法・限界耐力法においても全体崩壊系が理想でした。全体崩壊系とは、特定の層だけで抵抗せず、建物全体で地震に対して抵抗する構造体となるわけですから、AI分布には、そのような意味もあると考えることができます。ところが、AI分布に沿った剛性配分をもつ構造物を実現することは、やはり、困難なのです。そこでえ、地震入力エネルギー量が与えられ、構造物が受け持つべき履歴吸収エネルギー総量が算定できると、、この損傷を如何に構造物に配分するかが課題となります。この考え方により、各層ごと或いは各部材ごと、たとえば主架構(はり・柱)とダンパー(制振部材と考える)ごとにどれぐらいの履歴吸収エネルギーが必要かわかれば、構造物が地震に耐えうるかどうかを判断することができることとなります。
そこで、
最初に基本分布として、平均累積塑性変形率が各層で等しくなる、理想的な(最適と考えられるAI分布を基に)配分を考えます。
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第5話「損傷の配分、その2」
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b 今度は損傷の集中について・・・
 保有水平耐力設計法においては、剛性率を算定してきました。剛性率は、層剛性の低いところに損傷の集中が起こるので、これを当該層により大きな力が働くとして安全性を確保してきました。具体的な配分量まで計算しているとは言えません。一方、エネルギー法ではこの損傷の集中の程度を把握することが大きな目標となっています。
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 国土交通省「エネルギー法の釣り合いに基づく耐震設計等の構造計算を定める件」の告示案にそって、安全限界における性能評価の流れについて、学習してみることにします。
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 保有耐力設計法と最後の検証は、必要と保有の比較であり基本的な手法は同じであると言えますが、比較する量が違います。
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